*以下、全国農業新聞2016年4月1日版記事より転載
「アイメック栽培システム」導入広がる
島根・出雲市 農援隊がコンサル
特殊フィルムで適度なストレス
島根県出雲市の株式会社農援隊が導入と運用をコンサルする「アイメック栽培システム」の導入が広がっている。医療機器を開発するメビオール(神奈川県平塚市)が、人工透析の技術を応用したアイメックフィルムを使う農法。短期間に技術を習得でき、病気の発生が少なく高品質の野菜を生産できるという。農援隊は同システムの販売代理店として、設備の導入から技術研修、販売支援まで行う。
病気少なく高品質の野菜
アイメック栽培システムは、ナノメートル(10億分の1)サイズの穴が無数にあいたアイメックフィルムを培地として、フィルムjの下から点滴チューブで溶液を流すもの。フィルムは水や養分は通すが最近やウィルスは通さないため、病気の発生を抑え、農薬使用量を節減できる。
植物は適度なストレスを常時かけられている状態で、フィルムの上で大量の毛細根を張り巡らせる。その結果、糖やアミノ酸が多量に生成され、栄養機能成分の多い作物ができる。
葉物や果菜類などさまざまな野菜が生産できるが、収益性の高いトマトが中心。トマトの場合、周年栽培で収量を確保するため、フィルムの上にも1センチ程度の培地(ピートモス)と点滴チューブを配している。
同システムではほとんどの生産者がミディトマトを生産しているが、糖度は8〜12度と高い。うまみ成分であるグルタミン酸ナトリウムは通常の水耕栽培の2〜3倍で、抗ストレス作用があるといわれるGABAや抗酸化作用があるリコピンも3〜4倍と高い。市場で高い評価を得ており、通常の5〜6倍、フルーツトマトの1.5倍程度で取引されているという。
高糖度トマトは果実が小さくなるため、収量の確保が課題だが、アイメック栽培では10アール当たり4,000〜6,000本の高密度で定植するため、単収は8トン以上確保できるという。
同社は、導入前の経営計画、技術研修から、経営開始後の技術サポート、販売までコンサルタントしている。トマト栽培ではアイメック栽培を基本に、独自のノウハウを確立し、より高い収益性を実現しているという。
現在、県内を中心に18農場に納入しており、計画段階が10件。「導入先は全て新規参入企業で農業経験はない」と主任技師の竹内雅幸さん。
導入費用はハウスも含めて10アール当たり約3,000万円と資金面でのハードルは残るが、これまで撤退した企業はなく、規模拡大を進めているという。遠方の導入先も増えたため、オプションでネットワークカメラでの栽培指導もしている。