*以下、日本経済新聞2015年12月17日版記事より転載
ベトナムでIT農業
技術指導の農援隊、富士通と
ハウス環境自動で調整
農業技術指導の農援隊(島根県出雲市)は富士通と組み、ベトナムでIT(情報技術)農業に参入する。特殊フィルムと養液を使う植物工場型栽培をクラウド型システムで管理する。経済成長に伴う中間層の増加を背景に高付加価値野菜の市場拡大を見込む東南アジアで、農業生産者や企業に売り込む。
富士通は農援隊、農業資材関連2社と共同で2016年春にベトナムのハノイにIT農業の施設を開設する。植物工場を設置し、最先端技術を農業に応用する「スマートアグリ」のシステムを紹介するショールームに位置づける。
富士通が提供するのは農業支援クラウドサービス「Akisai(秋彩)」。ハウス内の温度、湿度や日射量などをセンサーで測定し、データをクラウド上に集約して管理する。
農援隊は植物工場用の設備施工と栽培システムの技術指導を担当する。特殊フィルムを通して養液を根に供給する「アイメック農法」で、高濃度トマトの栽培に適する。一般的な水耕栽培に比べウイルスや細菌の感染リスクが低い。害虫の侵入を遮断できるため高温多湿の東南アジアで有効とみられる。
「クラウド」売り込み
「Akisai」を導入することで、ハウス環境の変化に合わせて遮光カーテンの開閉や換気扇、水冷式空調のオンオフなどを自動調節できる。
島根県とハノイの間で遠隔管理システムも実験する。ハウス内に監視カメラを設置。室内全体の画像に加え、トマトの葉や茎、果実などの画像を出雲市の農援隊でモニタリングする。必要に応じてハノイの現地スタッフに指示を出すことで最適の生育環境を維持する。
ショールームの設備は12月初旬に完成した。トマトの苗約900本の植え付けも済ませている。初回の収穫を見込む16年2月24日に施設を一般公開することを決めた。現地の農業生産者や食品加工、流通業者などを招き「メード・イン・ジャパン」のIT農業を紹介する。
ベトナム側は通信大手のFPTが施設運営に参加する。ベトナム国立果物・野菜研究所が技術協力する。農援隊はベトナム側への技術指導も担当しており、15年9月には同研究所とFPTのスタッフを出雲市の栽培施設で10日間受け入れた。
高温多湿の東南アジアでの「アイメック農法」実践は初の試みになるため、当面はデータ蓄積と高品質の維持にめどが付いた段階で。システムの販路開拓に着手する構えだ。