近年、健康志向や環境配慮の高まりを背景に、「オーガニック」や「有機農業」という言葉が多くの人に認知されるようになりました。スーパーや直売所でも「有機JASマーク」のついた野菜や果物を見かける機会が増え、「オーガニック=安全・高品質」というイメージが一般的になりつつあります。
しかし実際のところ、オーガニック農業は“高品質=高糖度・高機能性”を意味するわけではなく、あくまで化学肥料や農薬を使わないという「栽培方法」のことを指します。この記事では、オーガニック農業の基本的な定義やメリット・課題、新規就農者が取り組む際の注意点をわかりやすく解説します。
オーガニック農業とは?有機JASの基準
オーガニック農業(有機農業)とは、化学合成農薬・化学肥料を一切使わず、自然の力を活かして作物を栽培する農業のことです。日本では農林水産省が定めた「有機JAS制度」に基づき、以下のような要件を満たした農産物だけが「有機」と表示できます。
・2年以上、禁止された農薬や肥料を使用していない農地で栽培されていること
・化学合成農薬・化学肥料を使わない
・遺伝子組み換え技術を使わない
・生態系への配慮・循環型農業の実践
つまり、オーガニック農業とは“安全な栽培方法”を実現する取り組みであり、必ずしも味が濃い・糖度が高いといった「品質の高さ」を保証するものではありません。消費者との誤解が生まれやすいため、販売戦略やブランディングには注意が必要です。
オーガニックの魅力と評価される理由
とはいえ、オーガニック農業には多くの魅力があります。特に以下の3点は大きな評価ポイントです。
◯環境への配慮
・化学物質による土壌汚染・水質汚濁を防ぐ
・生物多様性を守り、自然循環を活かす農法
◯安全・安心への信頼
・農薬残留や添加物を気にする消費者層に支持されやすい
・子育て世帯や健康志向層に根強い人気
◯ブランド化による高付加価値
・有機JAS認証付き商品は、慣行栽培の1.3〜1.5倍の価格で販売されることも
・直販や定期配送モデルとの親和性が高い
実際には難しさも多い?オーガニック農業の課題
一方で、オーガニック農業には現実的なハードルも低くはありません。特に以下の点は、新規就農者にとっての大きな壁となります。
◯病害虫対策が限定的
・農薬が使えないため、防虫ネットや天敵導入など手間と知識が必要
・雨や湿度の影響で、病気の発生リスクが高まりやすい
◯収量が安定しづらい
・肥料効果の発現が遅く、成長が不均一になりやすい
・慣行栽培より収量が2〜4割減少する場合もある
◯作業コストが高い
・雑草対策は除草剤に頼れず、手作業やマルチ処理に時間と労力が必要
・有機資材や堆肥のコストも高騰傾向に
新規就農者がオーガニックに挑戦するには?
オーガニック農業は志ある就農者にとって魅力的な選択肢ですが、成功のためには以下のような工夫が必要です。
・最初は小規模・多品目でリスク分散
・販路を先に確保(CSA・宅配・飲食店との連携など)
・有機農家での研修や現地見学を積極的に行う
・有機JAS認証の取得や、生産履歴の記録体制を準備
農援隊の支援体制について
株式会社農援隊では、オーガニック農業に関心のある新規就農者向けに、アイメック農法や低投入型農業との組み合わせ、設備設計、販路戦略の立案など総合的な支援を行っています。
「自然と調和した農業をやりたい」「消費者に安心を届けたい」 そんな想いをお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。現実的な経営との両立を見据えた、オーガニック農業の始め方を一緒に考えていきましょう。