農業を始めるうえで、どんな作物を育てるかと同じくらい重要なのが「どこで育てるか」、すなわち土地選びです。実新たに農業を始めたいと考えたとき、「農地は購入した方がいいのか、それとも借りた方がいいのか?」というのは、多くの方が最初に直面する大きな選択肢のひとつです。
どちらにもメリット・デメリットがあり、自身の資金力や就農スタイル、地域との関係性によって最適な選択は変わります。この記事では、それぞれの特徴を数値や制度の視点から比較し、判断のための材料を提供します。
農地を購入するメリットと注意点
✅ メリット
・自由度の高さ:栽培作物や施設設置、営農スタイルに制限が少ない
・長期的な投資として安心感:地代の支払いが不要になり、土地整備にも積極的になれる
・担保価値がある:将来的な融資や法人化時の資産評価にもプラス
⚠ デメリット
・初期費用が高額:平均価格は地域差が大きいが、全国平均で約60万円/10a(※農林水産省調査)
地域によっては10aで100万円以上かかることも
・地目変更や取得要件がある:農業委員会の許可(農地法第3条)が必要
農地を借りるメリットと注意点
✅ メリット
・初期費用が抑えられる:地代は地域によるが、10aあたり年額5,000〜15,000円程度が一般的
・就農スタートのハードルが低い:農機・施設への資金を回しやすい
・複数の候補地を試しながら選べる:将来的な買い取り交渉の可能性も
⚠ デメリット
・契約更新の不安定性:契約期間終了後に更新できないリスクがある
・施設設置や作物制限がある場合も:地権者との合意が必要
・信頼関係が前提:地域や地主との関係性が悪化すれば継続困難に
借地には農地法の規制がある
農地を借りる際には、農地法第5条に基づく「利用権の設定」または「貸借契約」に農業委員会の許可が必要です。主なポイントは以下の通り:
・利用期間は通常3年・5年・10年などで契約(更新可)
・利用目的・作物・設備設置に関する取り決めが必要
・書面による契約と利用計画の提出が求められる
特に、ハウスや灌水設備などの設置を検討している場合は、地権者との事前合意と書面化が不可欠です。
実例で見るケーススタディ
ケース①
Aさん(30代・就農1年目)
・10aを借地でスタート。低リスクで試行錯誤できた。
・初年度は年間地代7,000円。2年目に購入も検討中。
ケース②
Bさん(40代・法人経営)
・最初から1haを購入。安定経営だが、初期資金確保に苦労。
・土地代800万円+造成費用300万円。
地域との関係構築がすべての土台に
どちらを選ぶにしても、地権者や地域住民、農業委員会との信頼関係が継続的な農業経営のカギとなります。とくに借地の場合は、「何に使うか」「どのように使うか」「どれくらい続けたいか」を明確に伝え、納得のいく契約関係を築くことが重要です。
また、農業委員会や農地中間管理機構を通じて借地を紹介してもらう方法もあります。
農援隊のサポート
株式会社農援隊では、新規就農者の土地取得・借地に関する計画づくりをサポートしています。利用計画書の作成支援や、農業委員会との折衝に不安がある方のために、地域に応じた実務支援・事前相談も承っています。
「まずは借りて、将来的に買いたい」「初期費用を抑えて始めたい」など、お一人お一人の状況に応じた選択をご提案いたします。